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'95.5.23 風が届けた忘れ物

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「FUN MORE TIME」ツアー、最終日です。
武道館の一階席と呼ばれる場所は、
通常のホール会場では2階席に当たります。
ステージのほぼ正面に近いこの日の座席でしたが、
K列は一階席の最後尾です。
しかもこのK列は、一列だけ独立していて、
すぐ目の前が通路で、背後は壁、なのです。
思い切り足を伸ばし、お行儀悪く後ろに寄りかかっても
誰にも迷惑はかかりません。
そのかわり、他のオーディエンスとの一体感に欠けがちです。
かろうじて同じK列の、つまり「横」の連帯の構築が可能かな、という具合。

という訳でこの日は、少しクールに俯瞰した視線で見てやろう、
と目論んだのですが、思わぬ出来事が突然降って湧いて、
結局、身を乗り出すはめになりました。




昨年のクリスマスにアップした「'82.2.24 冷たい風に負ケズ」という記事の中で、
アルバム「over」に入っている「ひととして」のことに触れました。
この曲、とても好きなのですが、ライブでは一度も演奏されませんでした。

それが、この日「真夏の恋」を演奏する直前のMCで、
いきなり小田さんが歌い始めたのです。
「出会いは風のようで 別れは雨のようで.....」
......息が止まる程驚きました。
この時、小田さんは正面のマイクに向かって、
確かアコースティックギターを抱えてポロポロッ〜と伴奏を付けていた筈。
殆ど鼻歌に近いささやくような歌い方で、しかも、続きの歌詞を忘れ、
一旦止まってしまいます。
ー何故今頃突然この歌を?ー
驚いたり、いぶかったり、せわしない心持ちながら、
思わず身を乗り出して、他のファンと共に続きを口ずさんでいると、
小田さんも歌詞を思い出したらしく、また少し歌い継いでくれました。

ちゃんとした演奏ではなかったけれど、13年目にして初めて、
小田さんが生で歌っているのを聴く事が出来たのです。
で、嬉しさの余り、一体何故この場面で「ひととして」を歌い始めたのか、
全く記憶に残っていないのです。
「昔、こんな歌を作ったのですが......」
と、歌い終えたあと、開口一番、こう言ったのは覚えているのですが、
肝心のそのあとのセリフを忘れてしまいました。(苦笑)

とにかく、「クールに俯瞰して見る」という誓いはどこかへすっ飛んで、
すっかりいつものK・ODAペースに乗せられて、
気が付けばアンコールになだれ込んでいました。

この日のMCで、ハッキリ覚えていることが一つあります。
約束は出来ないけれど、という前置きつきで、彼はこう言いました。
「楽屋で一人で考えたのですが、自分が努力を重ねれば、
またコンサートは出来る、と。」

「小田さんの努力」は、この後更に数回の全国ツアーを敢行させることになります。
by kazemiti | 2006-05-14 01:32 | コンサート | Trackback | Comments(0)

歌と風 空と緑と


by kazemiti